「うわ、置物かと思った。気ぃついた?」
彼に声をかけられて指の先を見ると、確かに置物に、しかも犬のように見える猫が、休憩所のテーブルの上に鎮座していた。
「ノラかな、(売店の)飼い猫かな? 触らしてくれるかな~♪」
すぐに猫好きの彼が寄っていき、ひげを触るとちょっと嫌そうな表情。
「でっかいな~」と驚く彼に、「(触っても)逃げないだけ奇跡的よ」と、笑いながら私がベンチに座ると、大きな体を重そうに、ゆさっと猫が動き出し、私のひざに前足をかけた。

「え?え?」と私が戸惑うのを尻目に、どっこいしょと座り込んで、頭をマフラーにうずめて寝ようとしている。
「人なつっこいよ、飼い猫じゃない?」でもどうみても、どこか汚れた感じがあるのは、ノラにしか見えない。
「がんばってきたご褒美もらったね。」と、彼の言葉の意味がそのときはわからなかった。
障害者の息子をいつまでも待たせるわけにもいかず、ごめんねとテーブルに猫を返し、おみやげ売り場をぶらりと回る。
お土産を買って、息子がソフトクリームをほおばる間、(年寄りくさいが)すぐに座りたがる私はまたベンチに座る。
するとまた猫が、今度は躊躇なく私のひざの上に座る。
「何やっとんの?」売店から出てきた彼が呆れたように言うので、「しょうがないじゃん…」と少々情けない返事。
おまけに道行く人が「すげ~!でっけ~猫!」と注目するので、恥ずかしいやら困るやら。
あまりに気持ち良さげにしてくれるから、なかなか席を立つこともできない。

しばらくして、「またね」と猫を返して帰ろうとした時、隣のテーブルにウィンナーを食べようとする家族が向かい合って座った。
すると瞬時にひらりと身をひるがえし、家族の間に割って入り、「よこしなさい」と言わんばかりのドヤ顔で、猫がテーブルの上に乗った。
エサが欲しいのに全く媚びない態度に、自分が注目されており、今もらえなくても誰か他の人がくれるであろうこと、自分の立場をよくわかっていると感心した。
それでもエサをもらうため必要とあらば、手段を選ばないだろう。
ノラ猫の生き様が、とてもたくましく気高く感じて、見習いたいと本気で思った。
逆に、初対面の私のひざにくるのだから、誰にでも懐こいのだろうと思っていたので、そうではない様子に驚いた。
この話を後ほど友人にして、ご褒美ってなんだろ…とつぶやく私に、思いがけない返事をもらった。
動物は言葉や細かい表情で人間を判断することができないから、本能的な直感であなたに気を許せると、猫があなたを選んでくれたんだよ。
それだけあなたの気が穏やかになったってことだね。
…あぁ、だからご褒美なんだ、すごい大きなご褒美もらったなぁ~(嬉)
後日、調子に乗った私は、数年たっても私にだけ懐かない通い猫のさくらを触ってみた。
触らないでよ、ご飯が食べられないでしょ(怒)
…という相変わらずのつれない態度。
「猫は触るもんじゃない、触らせてもらうんやて」
彼の名言を思い出し、名古屋城の主が私を選んでくれたことに、あらためて感謝した。

なお、この文章は、ノラ猫を推奨するものではありません。
寒空の中でエサを探す術がない子猫や迷い猫が生きていけないことも、言うまでもないことですが、誤解なきよう付け加えさせていただきます。
GHCR とものすけ
里親さん希望の方のご連絡先
メール
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までご連絡ください。
Gifu Happy Cats Rights 岐阜ねこを救う会
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